木の根元に埋めるなら、私はひとつの約束を。
一面を染める花弁は地に空に。ひらひらと舞っては踊り合い、やがては落ちて桃と白の布となる。ほんのひと時ばかりの世界の中で、アリババは紅炎と地に腰を下ろしていた。
無数に降っては積もる、温度では溶けない柔らかなもの。
冬を越え、春を迎える喜びに世界が笑っているようで。
「綺麗…ですね」
「…そうだな」
次から次へと降ってくる鮮烈であたたかい、現実味の無い場景。
二人そこで寄り添って、確かに傍らがジンと痺れた。
「こんな景色…初めて見ました」
去年はお互い共に忙しくて都合がつかず、花が咲き乱れる様を横目にしていた記憶しかない。そしてこんなにも美しい景色の中に身を置いたのは初めてで。
(こんなにも世界が綺麗だと思えるなんて…)
それはきっと、隣に居てくれる人のお陰もあるのだろう。そうきっと。
ああ、けれど…と、アリババはそっと眉を下げた。
けれどこんな景色はもう何日も見られないのだろうと。
意識をしなければ花が咲き散るのなんて分からないし、意識をしたってそう長く在ってはくれない。
花は美しくとも生き物なのだ。変わらぬままいてはくれない。
そうっとアリババが寂しそうな顔をしていると、まるでそんなアリババの心を読んだかのように紅炎がゆるりと唇を開いた。
「また咲く」
「、え?」
「来年も再来年も…ここは花で溢れる。だからそんな顔をするな」
そうだな…どうせならいつものように笑ってくれ。
でなければ何のためにおまえを此処に連れてきたのか。
「来年も来るのだろう?」
(一緒に)
…言いはしなかったが、確かにそう聞こえた。
アリババは一度きゅっと唇を締め、そうしてゆっくりと笑った。まるでそれは長い時をかけて綻ぶ花のように。
紅炎はするりとアリババの金糸に指を通し、そのまま優しく手の甲で頬を撫でた。
桃と白に染め上げられた世界でふたり、例えようもなく美しい世界を眺めていた。
赤い辞典の組成式
(来年も再来年も…どうか貴女と共に)
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仄か様、この度は50000打企画にご参加下さり誠にありがとうございました!
炎アリでお花見がテーマのお話…との事でしたが、いかがでしょうか?…もう消化が遅くて本当に本当にすみません!リクエストありがとうございました。すみません!(土下座)
それでは本当にありがとうございました!!
(針山うみこ)